大好きな本を酒の肴に。
大好きな本を読みながら、一人静かに本を読む。たまにはいいものです。
というわけで、今回は私の一番好きな本をご紹介します!
本の基本情報
『西瓜糖の日々』
著者:リチャード・ブローティガン
翻訳:藤本 和子
出版社: 河出書房新社
ISBN-13: 978-4309462301
発売日: 2003/07/20
今回のレビューは2005年9月30日の初版第二刷の内容を元にしています。(今回紹介する『西瓜糖の日々』は1975年に同社より単行本で刊行されたものの文庫版です)
出会い
大学時代、サークルの先輩に
「何か面白い本を貸してください」
と、お願いして貸してもらったのが、この本『西瓜糖の日々』
気がつくと、私は、本を読み終わるよりもはやく、自分用の一冊を購入していました。
何度も読みかえしたくなるだろうな、と思ったからです。そして、自分の本棚に並べるべき本だ、と思ったからです。
それから10年、この本はいつだって私のそばにいます。
どんな本?
ブローティガンと言えば、村上春樹氏、村上龍氏、高橋源一郎氏などに大きな影響を与え、日本のポストモダン文学を語る上で欠かせない、非常に重要な作家。
特に『アメリカの鱒釣り (新潮文庫)』は世界的なベストセラーとなり、本国アメリカでは、ヒッピー文学の英雄として一時期崇められたりもしていました。
……なんて、ちょっとそれっぽいことを書いてみましたが、そんな事はどうでもいいです。真にどうでも良いことなのです。
『西瓜糖の日々』は、およそ200ページの薄い文庫本ですが、ひとたびページをめくれば、甘い匂いと、色のついた太陽の光、そして音をもたない言葉が私たちをやさしく包み込んでくれます。
どんな本かと聞かれれば、
ある人は「詩的な幻想小説」と答えるでしょう。
またある人は「甘くて静かな本」と答えるでしょう。
そして私は「とても心地の良い本」と答えるでしょう。
そんな本です。
この本の魅力を、そのままあなたに伝えられればよいのでしょうが、残念ながら私はその術をもちません。
だから、とても簡単な言葉で、けれどこの本を紹介するのに適していると思う言葉で、『西瓜糖の日々』を紹介することにします。
『西瓜糖の日々』
この本は、わたしのいちばんすきな本です。
私はこれまで多くの本を読んできました。この本より面白い本、ワクワクする本、泣ける本、そんな本にはたくさん出会ってきましたが、いまだにこの本より好きになれる本はありません。
笑ったり、泣いたり、感動したり、そんなことはできないけれど、読むたびに落ち着いた気持ちになれる、冬の夕焼けのように穏やかな本です。
この本に出会って、10年。この本はいつでも私のそばにいます。
そして、これからも私のそばにいてほしいと思っています。
この本のことが、すこしでもあなたに伝わればよいのですが。では最後に『西瓜糖の日々』最初の一段落を引用して、このエントリーを終わろうと思います。
いま、こうして私の生活が西瓜糖の世界で過ぎていくように、かつても人々は西瓜糖の世界でいろいろなことをしたのだった。あなたにはそのことを話してあげよう。わたしはここにいて、あなたは遠くにいるのだから。