映画の感動を再び。珠玉の一枚『シン・ゴジラ音楽集』レビュー【『シン・ゴジラ』サウンドトラック感想】

映画『シン・ゴジラ』を観て以来、劇伴が頭のなかから離れなくなってしまいました。どうせ頭のなかで流れるならば、最初から最後までしっかり聴いてやろうじゃないか!というわけで、オリジナルサウンドトラック『シン・ゴジラ音楽集』を購入。その感想を記事にしました。

※この記事は映画『シン・ゴジラ』のネタバレを含みます。

※ちなみに『シン・ゴジラ音楽集』そのもの、及び鷺巣氏による「各曲解説」もがっつりネタバレしていますので、先にサントラだけ……という人は注意してください。

こんな人にオススメ!

『シン・ゴジラ』が好きな人 ゴジラシリーズが好きな人
作曲者による解説を読みたい人
巨災対好きな人

基本情報

シン・ゴジラ音楽集
『シン・ゴジラ音楽集』
発売日:2016/7/30
ディスク枚数:1
曲数:32(うちボーナストラック6曲)
レーベル:キングレコード
収録時間:78 分

収録曲一覧

01:Persecution of the masses (1172)/上陸
02:ゴジラ上陸/「ゴジラ」/進化(伊福部昭)
03:11174_rhythm+melody_demo/対峙
04:Early morning from Tokyo (short)/報道1
05:11174_light_edit_demo/索敵
06:EM20_rhythm_GZM/組織結成
07:EM20_Jerry_GZM/情報供与
08:ゴジラ復活す/「キングコング対ゴジラ」/再上陸(伊福部昭)
09:ゴジラ登場/「メカゴジラの逆襲」/脅威(伊福部昭)
10:Black Angels (Feb_10_1211)/作戦準備
11:Fob_01/タバ作戦
12:Defeat is no option (1197)/進攻
13:Who will know (24_bigslow)/悲劇
14:SS_103_GZM (Famously)/報道2
15:EM20_Godzilla/再始動
16:EM20_CH_alterna_01/巨災対
17:EM20_CH_alterna_03/報告
18:EM20_CH_alterna_04/共闘
19:宇宙大戦争/「宇宙大戦争」/ヤシオリ作戦(伊福部昭)
20:Under a Burning Sky (11174_battle)/特殊建機第1小隊
21:Under a Burning Sky (11174_orchestra)/特殊建機第2・3小隊
22:Omni_00/終局
23:ゴジラ・タイトル/「ゴジラ」/終曲その1(伊福部昭)
24:メインタイトル/「三大怪獣・地球最大の決戦」/終曲その2(伊福部昭)
25:メインタイトル/「怪獣大戦争」/終曲その3(伊福部昭)
26:メインタイトル/「ゴジラVSメカゴジラ」/終曲その4(伊福部昭)
27:Under a Burning Sky (11174_rhythm_united_choir) (ボーナストラック)
28:Early morning from Tokyo (ボーナストラック)
29:EM20_rhythm_GZM_full (ボーナストラック)
30:EM20_Jerry_GZM_full (ボーナストラック)
31:Who will know (24_bigslow_strings) (ボーナストラック)
32:Under a Burning Sky (11174_united_choir) (ボーナストラック)

Amazonの商品ページでは、全曲を視聴することができます。

鷺巣詩郎氏の解説がおもしろい

鷺巣氏の10ページにも及ぶ解説が充実。曲の背景、作成方法、庵野監督との裏話まで結構細かく書かれています。音楽そのものが好きな方、制作秘話が好きな方にはこの解説だけでも価値がありそう。

伊福部昭氏の曲も入っているよ!

ゴジラや特撮をほとんど見たことがない私でも聞いたことがある名曲の数々。

この『シン・ゴジラ音楽集』には、それらのオリジナル音源を恐ろしい手間暇をかけて忠実に再現したもの(詳しくは鷺巣氏の解説参照)が収録されています。ノイズもしっかり再現されていて、ズーンと腹の底に響くような迫力が。再出現の曲なんて、聴くたびにゾワゾワ〜としちゃいます。

デーンデーンデンデンドンドン率高し!

エヴァや『踊る大捜査線』シリーズでおなじみのEM20(Evangelion Music #20)。みんな大好き巨災対のシーンでかかるアノ曲です。

なんとこのアルバム、収録曲32曲中8曲、4分の1がこのEM20なのです。どんだけティンパニ叩くのさ!

この情報だけ聞くと「えー、ちょっと多すぎ……」と思われるかもしれませんが、EM20は巨災対の変化及び物語の進行に合わせてかーなーり曲調が変わるので通しで聞いていても退屈しません。巨災対スキーの私にはとても嬉しい構成です。

いや~しかし、曲数の多さからこの映画における巨災対の重要度が伝わってきますね!巨災対スキーの皆さんには、ぜひこのアルバムを買っていただいて、物語の進行と曲調の変化を楽しんでいただきたいです!!!!

好きな曲ベスト3

どの曲も素晴らしいですが、その中でも特にコレ!という3曲(11曲)というか、シーンというか、もうだいぶ選定基準がブレブレになりましたが、とにかく選びました。

伊福部氏の曲はあまりに別格なので今回は選んでません。

第3位 15:EM20_Godzilla/再始動 他(EM20シリーズ)

巨災対シーンで流れるティンパニのアレ。

一番最初に曲が流れた瞬間「エヴァwww」とちょっと笑ってしまったんですが、巨災対がその智慧を集めていく度に、アレンジ違いのEM20が繰り返し流れ、最終的に私の中ではエヴァよりも巨災対の曲になりました。

最初はオーケストラっぽい感じでちょっと固くて“役所感”があるのに、物語が進むにつれギターがギュインギュイン入って“オラオラゴジラァ!!!”と曲調がどんどん派手に。メンバーの気持ちや関係の変化を表しているようで、聴いていてとても楽しかったです。

第2位 13:Who will know (24_bigslow)/悲劇 14:SS_103_GZM (Famously)/報道2

1位とずいぶん迷いましたが、こちらの2曲を(そもそも1曲じゃなくてごめんなさい)。火炎放射及び放射熱線による絶望的光景から、立川に向かう矢口のアップあたりまで。劇場内が静まり返り、絶望に包まれるあのシーンの音楽です。

私はこの2曲が流れているシーンが一番好きです。いや、楽しい気分にはならないので「好き」というのは少し違いますが、初回も2回めも心を丸々持っていかれてしまいました。畏れ多い、神々しい映像にふさわしい曲です。

ちなみにトラック13には歌詞が、14の原曲「Famously」には朗読英詩がついており、そのどちらも意味深。興味がある方は訳したり調べたりしてみてください。

Who will know (24_bigslow)/悲劇の歌詞・日本語訳
http://00tn2.blogspot.jp/2016/08/who-will-know-24bigslow.html

Famouslyの英詩

Famously, to the depths of despair, I have been sent.
No one was saved, and to their graves, perished and dead.
All on my head.
Because of me.

Those I have failed feel my betrayal.
The final nail, hammered by me.
I didn’t mean what is done.
If I could turn back the time now, I’d sacrifice my own life for him.
Why not me?

引用 EVANGELIONWikia(http://evangelion.wikia.com/wiki/Famously…)

矢口の感情と=ではありませんが、曲の持つ感情を理解した上で矢口のシーンをみると、さらに切ない気持ちになります。

第1位 22:Omni_00/終局

エンディング、科学技術館の屋上で矢口とカヨコが会話するシーンあたりから。穏やかで、少しずつ明るく力強くなっていくこの曲は、破壊の物語の終わりと、再生の物語の始まりにぴったり。

実はCDを再生するまで、いまいちどの曲か思い出せなくて「あのシーンの音楽はどんなんだったっけなぁ……」なんて思っていたのですが、トラックがはじまった瞬間「あああああぁぁ!」と巨災対の安田さんばりに衝撃を受け、エンディングシーンの空気感まるごと思い出しました。ごめんなさい。

神を超越した存在を倒すでもなく、ただ鎮め、共に暮らしていく。すごく日本人ぽいですよね。ギリギリのフチに立ちながらも未来への一歩を踏み出す、静かな決意。

聞く度に「よし、がんばろう」と前を向けるので、この曲を1位に選びました。あと、この曲に関する鷺巣氏のコメントは作品やキャラクターへの愛情が感じられてとても良いです。ぜひ。

まとめ

『シン・ゴジラ音楽集』はいいぞ。以上、sakimitamaでした。