デザインの視力があがる一冊。「なるほどデザイン」レビュー

今回は目で見て楽しむ新しいデザインの本、「なるほどデザイン」をご紹介します。

基本情報

なるほどデザイン〈目で見て楽しむ新しいデザインの本。〉
なるほどデザイン〈目で見て楽しむ新しいデザインの本。〉
著者:筒井 美希
単行本:272ページ
出版社:エムディエヌコーポレーション (2015/7/31)
ISBN-13::978-4844365174
発売日:2015/7/31

http://naruhodo-design.com/

この記事は初版第一刷、Kindle版を元にレビューしています。

こんな人にオススメ

  • デザインの仕事につきはじめた人
  • デザインに興味がある人
  • 面白いデザイン本が読みたい人
  • Eテレが好きな人

どんな本?

デザインに関するものごとを、なるべく「目で見て楽しめる」形にまとめた本。

どのページにもわかりやすい実例や、図解が載っていてパラパラしてるだけで楽しめます。でも、楽しいだけじゃなくて「へ~」とか「ほー!」とか「なるほど」ってなる、柔らかくて鋭くて楽しい、Eテレみたいな本。

公式サイトでは、気になる中身をチラッと見ることができます。
http://naruhodo-design.com/

目次(抜粋)

Chapter1 編集×デザイン
編集とデザインの関係
デザインしてみよう

Chapter2 デザイナーの7つ道具
ダイジ度天秤
スポットライト
擬人化力
連想力
翻訳機
虫めがね

Chapter3 デザインの素
文字と組み
言葉と文章

写真
グラフとチャート

Chapter 1 編集×デザイン

誰に何を伝えたいのか、なんのためにデザインするのか、目的に合わせたデザインとは。

「編集とデザインの関係」では「朝ごはん」をテーマにテイストの違う3つの作例を紹介。「デザインしてみよう」では記事の企画から完成までを6つのステップにわけ、各項目ごとに細かく解説していきます。

一つのテーマでこんなに違う!

「編集とデザインの関係」では「朝ごはん」という一つのお題から、全く違う紙面を3種類作ります。すべて同じお題なのに、こうも違うモノができあがるなんて。しかも、作例すべてがおどろきの完成度。どんな本の1ページなのか、その本の表紙まで想像できちゃうリアリティ。

たまねぎの皮が向けていくように

「デザインしてみよう」ではページをめくるたび、ステップが進むたび、どんどんデザインが洗練されていくのがわかります。「えー、もう直すことないよー」なんて思っていても、実際直されると、確かに良くなってるんです。この後半のブラッシュアップがプロとアマチュアの差なんですねぇ。

Chapter 2 デザイナーの7つ道具

ダイジ度天秤・スポットライト・擬人化力・連想力・翻訳機・虫眼鏡・愛。筆者が培ってきた知識や、大切にしていることを道具に例えて解説。

とてもユニーク、そしておもしろい

Chapter2で一番印象深かったのは擬人化力の項。この項は「デザインにも人格・キャラをもたせて、デザインのヒントを得よう」という内容。

その中に「“組み”を“話し方”に例える」というのがありまして。「組み方を擬人化するなんて、ちょっとマニアックすぎるだろ……」なんて思いながら読んでいたのですが、次のページを見てみたら、あらびっくり、まさにその通りの文字組が並んでいるわけです。

確かに、これは大学教授の講義だし、これはプレゼン。「なるほど、まったくその通りw」と、笑いを堪えるのが大変でした。いいデザインて、ホントにいいキャラしてるんですね。先に擬人化キャラクターを出して、後から擬人化対象のモノを出すという構成も楽しかったです。

Chapter 3 デザインの素

文字・組・色・写真など、デザインの素となる各要素の基本的な知識を解説。

あの色たちに名前がついた

配色のページでは、色に関する名称とその意味を解説。頭のなかで「こういう色合い」と漠然と思っていたハーモニーの名前を知ることができました。名前がつくと、頭の中から引っ張り出しやすくなりますし、調べやすく、伝えやすくなって、知識のレベルが一気に上がりますよね。私のように知識の少ない人に、ぜひ読んでもらいたいChapterです。

感じる写真・読む写真

「感じる写真」とは、情緒を伝えることを優先した写真。「読む写真」とは正確に伝えることを優先した写真。この本で1番の「なるほど」ポイントでした。

文章に詩と説明文があるように、写真にも感じる写真と読む写真がある。どちらも同じ写真だけれど、その役割は全く違う。毎日写真を撮ったり・みたりしているのに、そんなこと考えてもみませんでした。

良い構図を探したり、撮影ブースを作ったり。無意識に撮り分けてはいたけれど、こうして名前をつけて、実例で説明されることで、自分の中に新しい概念ができあがりました。

総評

できれば紙の本で

この本は、2ページで1セットになる構成が多く、見開きの状態で一番情報が伝わりやすいように設計されています。なので、1ページずつ表示される電子書籍(Kindle)だと、100%この本を堪能することができません。こんなに良い本なのにモッタイナイ!スペースとお金に余裕がある方は、ぜひ紙の本を購入しましょう。

うっかりKindleで買ってしまったアナタは、設定を変更し見開きモードにして楽しんでみてください(KindlePaperwhite 第6世代:画面上部タップ→Aa→画面方向)、少し動作が遅いですがブラウザ上で動くKindle Cloud Readeもオススメです。

「デザイン」に対して興味があるすべての人に

本の「はじめに」を読むのが好きです。いいですよね、「はじめに」。この本の「はじめに」には、こんなことが書いてあります。

主にはデザインを良くするヒントが欲しい新人デザイナーの役に立つようにと考えてつくりましたが、ある程度キャリアのある人にも、デザインを仕事にしていない人でも、「デザイン」に対して興味があるすべての人に、面白く読んで・見てもらえるような内容を目指しました。

 

デザインを仕事にしていない人でも、「デザイン」に対して興味があるすべての人に、面白く読んで・見てもらえるような内容を目指しました。

大事なことなので二回言いました。

私、総務なんです。デザインを仕事にしてないんです。でも、デザインの話を聞くのは好きだし、素敵なデザインに触れるのも好き。だから、そういうモノのしくみを学んだりするんですけど、「デザイナーでもないのに、なんでこんなこと勉強してるんだろ」って、ときどき考えちゃったりして。仕事で役に立つことだけが学びじゃないとわかっていても、どこか居心地の悪さのようなものがあったんです。

でも、この本は「はじめに」で、興味があるなら誰でもどうぞって、手を差し伸べてくれた。それがとても嬉しかったんですよね。だから、私は「はじめに」でこの本を好きになりました。

図解がていねい

「なるほどデザイン」は、デザインをビジュアルで伝えようとしている本。文章による解説の後には「ほらこのとおり」と言わんばかりの優れた実例をかならず示してくれます。

疑り深い私は、文章を読んだ時点では「ほんとかねぇ」なんて半信半疑でいるのですが、その後に出てくる図解が適切すぎて「くっ!本当にそのトオリだ!」と毎度毎度、納得せざるを得ませんでした。悔しいけれど、わかっちゃう。まさに「なるほどデザイン」。ハウツー系で、ここまでしっくりくるタイトルの本も珍しいです。

デザインの視力があがる一冊。

「なるほどデザイン」を読むと、デザインの視力があがります。

今、目の前にあるデザインは、私に何を見せたいのか・何を伝えたいのか・何のために作られたのか。見えないモノが見えてきて、受け取れる情報がグッと増えます。

一冊読めばなんでもできるようになる!というわけではありませんが、この本のおかげで「デザインをみる」きっかけを得ることができました。読めば読むほど見えてくる。見れば見るほどわかってくる。本書の中にある、たくさんの「なるほど」を自分のものにするため、何度もくりかえし読み込んでいきたいと思いました。

Eテレのような柔らかさと鋭さで、デザインの視力を上げてくれる、読んで楽しい「なるほどデザイン」

素人から玄人まで、デザインに興味があるすべての人にオススメの1冊です。ぜひ、手にとってみてくださいね!以上、sakimitamaがお送りしました。お疲れさまでした。