今回は「勢いのあるジェスチャーが描きたい、でも、同時にアナトミーも学びたい!」という時に出会った、マイケル・マテジ先生の『アナトミーとフォース』をご紹介します。
この本はこんな人にオススメ
- 勢いのある線を描きたい人
- アナトミーと躍動感のバランスに悩んでいる人
注意:この本は「イチから絵の描き方を学びたい!」「イチからアナトミーを学びたい!」という方はちょっと難しく感じるかもしれません。
その場合は『グレン・ビルプのドローイングマニュアル』が、いいのかなぁ、と個人的に思います。基本的なところからはじまるし、精神面のフォローもあるので。
基本情報
『アナトミーとフォース 構造と機能から描く躍動感ある人体』
著者:マイケル マテジ
単行本(ソフトカバー): 332ページ
出版社: ボーンデジタル
ISBN-13: 978-4862464224
発売日: 2018/8/3
出版社ページ
https://www.borndigital.co.jp/book/6746.html
もくじ
謝辞・まえがき・重要なコンセプト
Chapter 1:フォースのパワー
Chapter 2:マッス、フォースに満ちたフォーム
Chapter 3:フォースのあるシェイプ
Chapter 4:骨格:人体の枠組み
Chapter 5:本書の読み方
Chapter 6:頭部、首、首周り
Chapter 7:胸、肩、肩甲骨
Chapter 8:腕、手
Chapter 9:腹部、背部
Chapter 10:骨盤
Chapter 11:大腿
Chapter 12:下腿、足
Chapter 13:おわりに
この記事を書いているsakimitamaはこんな人
コミュケーションツールの一つとして、絵を勉強中。基本独学、時々オンラインスクール。絵を通して、自分の感情や世界を伝えられたらいいなぁと思っています。
読んだきっかけ
AnimationAid(Animationのオンラインスクール)の課題が「アナトミーを意識したジェスチャードローイング」だったので。また、授業内でもオススメされていたので。
はじめに
私、こういう本の「はじめに」的な部分を読むの、めちゃくちゃ好きなんですよ。特に海外のハウツー本は「はじめに」がアツい。
感動した箇所を引用すると、ほぼ全文になってしまうので、その中でも特に心に残ったところをご紹介。
描くのはアナトミーではなく、フォース
動きを描くと、アナトミーが表れてくるのです。その逆はありません。三角筋を描けば、もちろん三角筋のドローイングができます。三角筋を収縮させる力を描こうとすれば、描き出されるのはその力です。結果、三角筋が描かれるのです。「フォースドローイング」を体験するためには、この発想の転換が重要です。
(p.xⅳ まえがき)
フォースを描けば、自然にアナトミーが出てくる!まさにこれジェスチャードローイングにつながるっ!!!!って、ひとり感動した箇所。
「身体を描いてフォースを表現」しようとしていた自分にとって、衝撃的な言葉でした。
心の中の対話
心の中で行う対話は、自分を落としめるためではなく、気持ちよくするためのものです。(中略)(ドローイングは)好奇心の羽を広げ、経験を積むために描くのです。(中略)恐怖を作り出しているのは「自分自身」です。捨ててしまいましょう!皆さんがしているのは、ドローイングです。飛行機から飛び降りたり、鮫を捕獲したり、大恐慌時代に生きようというわけではありません。怖いものなどありません!
(p.ⅹⅶ 重要なコンセプト 原文ママ)
こちらも心に刺さる言葉です。好奇心の羽を広げ、経験を積むために描く!何この素敵な言葉!!!そうだよなぁ、子供の頃ってそんな感じだったよねぇ、ってジーンときました。
この本の好きなところ
個人的に好きなところ、人にオススメしたいポイントをご紹介。
絵が大きい
マテジ先生の本はとにかく絵が大きいです。ページいっぱいにドーン!とDrawingが描いてあって、迫力があるし、わかりやすいし。
そしてなにより、ページが進む。
(その分、分厚いので全体の量は決して少なくないです。300p超えだし)
「ページがモリモリ進んでいく」って、重要です。絶対重要。嬉しいですよね。達成感がある。個人的にはすごくモチベーションになりました。
シンプルな形から始まる
アナトミーってものすごく難しいです。骨とか、筋肉とか、脂肪とか、皮膚とかとかとか。
でも、人体って、だいたいみんな同じ形なんです。だって「棒人間」って成立するじゃないですか。それくらい「シンボル化」できます。
シンボルから覚えちゃいましょう、シンプルなカタチからやっていきましょう。この部分は、とりあえずこの辺を抑えておけば「それっぽく、勢いをつけて描けますよ」と教えてくれるのがこの本の良いところ。
単純なカタチからはじまる本書の解説は「ええっ、こんなんでいいの?(良い意味で)もっと◯◯筋を描かなきゃいけないんだと思っていた!」と、私の硬い頭と「難しいアナトミー」への不安感をほぐしてくれました。
(あ、でも、上でも書いたように、これから絵やアナトミーを学びたいって方は、他の本からのほうがいいと思います。王道ってやっぱりあるので)
マテジ先生の絵が好き
私、マテジ先生の線が好きなんです。線一本一本が生きてる感じがして、力にあふれている。大胆でかっこいい。
私がドローイング系ハウツー本で一番重視しているのは「作例が好みかどうか」。どれだけ内容がすばらしくても、絵が好みじゃないと続かないんです、私。
というわけで、この本を購入してみようかな……って方は、ぜひマテジ先生がどんな絵を描くのかを確認してほしいです。
できれば本屋さんで、それが難しければ「マイケルマテジ」もしくは「Michael Mattesi」で検索してみてくださいね。ボーンデジタルさんの公式ページや、Amazonで一部サンプルを見ることができますヨ。
「ルール」と「クリエイティブ」の間で
提出課題のテーマが「アナトミーを重視したジェスチャードローイング」だった時、本当に悩みました。
中途半端にアナトミーの知識があることで、「ええと、広背筋がここにあって……、ここは上前腸骨棘で……」って知識先行で絵を描いてしまって、「紙の上に描かれている人が、嬉しそうじゃなくなってしまった」んですよね。
「あぁ、これはダメだな。でも課題あるし、どうしよう……」って悩んでいた時に、出会ったのがこの本。
この本は「人体の力強さ」「勢い」「描く楽しさ」を保ちつつ、人体構造を正しく(もしくは”それっぽく”)描く方法を教えてくれました。(ま、身についたかどうかは別として)
本当によいタイミングで出会えたなぁ、と思います。
『アナトミーとフォース』は、今の私のように「ルール」と「クリエイティブ」のバランスで悩んでいる方の背中を押してくれる、そんな一冊なのではないでしょうか。
あなたのお絵かきタイムが、楽しく素敵な時間になりますように。
以上、『アナトミーとフォース』の感想、sakimitamaがお送りしました。お疲れ様でした。